シルク・ドゥ・ソレイユでステージに上がるには、メイクをしなくてはなりません。
人によってメイクにかかる時間はまちまちですが、
自分の場合はだいたい1時間くらいかかり、
それを13年間、ショーがある日は毎日行っていました。
自分にとってメイクの時間とは、
誰にも何にも煩わされることなく、いろいろと思考することができる、自分だけの時間でした。
そういう時間を持つことは、とても大切なことだと思います。
なぜ自分にとってとても大切なのか。
メイクというのはステージへの気持ちの切り替えのスイッチという面もありますが、それだけではありません。
メイクも慣れてしまえば、顔を洗うように、歯を磨くように、習慣の一つとして行うことができるようになります。
メイクの過程を意識しなくても、ルーチンワークのように手を動かしていくことができるようになります。
その習慣となった時間の中で、自分と対話することができる、ということに大切さを見出だしました。
メイク中は、ブラシや小さな鏡を持つことで両手が塞がることが多いですし、
視線は鏡に映る自分の顔です。
仮に音楽を聴きながらだとしても、メイクに集中しているとほとんど耳に入ってきません。
他にできることといえば、考えることくらい。
特にこれといったことを考えていたわけではなく、漠然とした思考。
その時に心に浮かんでくることを追いかけていました。
自分のこと、今日のことや明日、将来のこと、あれしたい、これしたい、どこへ行こうか、何をしようか、
などなど。
これが、自分をみつめ、内面と向き合う時間になりました。
集中しているという心の状態で、自分と対話する、考えることができる、ということがすごくいいのです。
��日のうちで、集中していろいろと考えることのできる、自分の時間をどれだけ持てているのか?
仕事をする、、勉強をする、食事をする、趣味の時間、インターネット、メール、SNS、テレビ、など、
そうした時間の後に残っている時間はあるのか?
たとえ何かをしながらでも、そちらに意識のすべてを取られることなく、考えることのできる時間。
それが、大切なメイクの1時間だったのです。
メイクをしなくなっても、1日のうちで考えることのできる自分の時間を作れたらと思う。
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