シルク・ドゥ・ソレイユの年間公演回数は、
ツアーショーであれば300公演前後、
レジデントショーであれば500公演弱、行われています。
どんなアーティストであれ、
それだけの公演回数すべてにわたって、
最高の状態でステージに上がれるわけでもありません。
一流のアーティストはコンディションの波が小さいですが、
それでも状態が良くない時もあります。
その状態の良くない時に、
どれだけのパフォーマンスを見せることができるのか。
できるのであれば出ますし、
できないのであれば、役割などのやることを減らすか、
まったく何もできないのであれば休みます。
アーティストの希望ではなく、
物理療法士が状態を判断し、
最終的にディレクター(舞台監督)が決定します。
13年の間に小さな怪我から大きな怪我までしたことがあります。
日本人的な感覚で考えると、
怪我をしてでも出たい、
怪我をしていても出ろ、
といったことがありそうですが、
その考え方はあまり良く思われない印象でした。
怪我や体調不良でも、
パフォーマンスにあまり影響がないのであれば出れます。
しかし出続けることによって改善しない状態が続くか、
悪化した場合には、休む、という判断になります。
休んで一日でも早く状態をよくする方が、
だらだらと悪い状態を続けることよりも良い、という考え方です。
体を使う仕事なので、
「体調管理が大変ですね」と言われることも多かったのですが、
どんな仕事であれ体調管理をすることは当たり前のことだと思います。
疲れや休息を必要としていれば、
早めに寝ることや、睡眠時間を多くします。
暴飲暴食を避け、
規則正しい生活を自然に心がけることは、
どのような仕事に携わっていても変わりはないはずです。
その上で、
怪我や体調不良になることもあるでしょう。
そういう時には、休むこともまた大事だという信念です。
実際に1年間でさえ、
休むことも減らすこともなくフルで出演し続けることができるのは数人です。
そんな中、なわとびの演目はグループでの演目でもあるので、
常に物理療法士と情報交換をして仲間の体調を把握し、
その日のオーダーをやりくりしていました。
それはまるでパズル組み立てていくように。
さらに組織全体としては、
「誰が抜けても大丈夫」という状態にしておかなくてはなりません。
主役のキャラクターやソロの演目という、
そのショーにとって重要な役割の人が抜けても、
ショーが成り立つようにバックアップの人材は中で用意しています。
大きな怪我で長期に休まなくてはならない場合には、
外から人材も確保します。
そうすることで、
今日も世界中のどこかで、
シルク・ドゥ・ソレイユのショーが行われているのです。
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